一流企業がやっている全社戦略の立て方とは?

戦略策定

全社戦略とは、ミッション・ビジョンの実現×企業価値向上のために、事業領域を設定し、各事業ごとの目標・資源配分を定めたものです。

つまり、それら事業の組み合わせによって、企業全体としてのミッション・ビジョンをいかに実現していくか、企業価値をいかに高めていくかということを考えるのが全社戦略となります。

特定市場における勝ち抜きシナリオ検討としての事業戦略とは性質が異なります。全社戦略は、ポートフォリオ管理という個々の事業の資源配分だけでなく、その金をどのように確保・調達するかを考える、広義には財務と資本政策も含まれるのです。

 

全社戦略策定の全体像

全社戦略策定のステップとしては、大きく下記4つに分けられます。

  1. ミッション・ビジョンの設定
  2. 事業領域の設定
  3. 各事業ごとの目標・実現タイミング設定
  4. 事業ごとの資源配分

 

ミッション・ビジョンを定め、それを実現するために最適な主戦場(事業領域=どこで戦うか)を定め、その主戦場でどの程度の成功をいつまでにおさめるのか目標を立て、各事業にどれだけ既存のリソースを配分するかを決めるということです。

事業ごとの資源配分の方針は、事業価値の総計である企業価値を最大化する組み合わせから決定されます。

 

世の中には、事業戦略の書物は数多くあるのですが、全社戦略を詳細に説明した書籍は希少です。

そんな中でも良書は存在します。全社戦略をより詳しく理解したい方は、以下の書籍がおすすめです。

 


全社戦略がわかる (日経文庫)

 


[新版]グロービスMBA経営戦略

 

全社戦略策定の個別ステップ

ミッション・ビジョンの設定

そもそもミッションとはなんぞやということであるが、ミッションは一言で会社の存在意義であり、どのような世界を創りたいかということを表現したものとなります。

続く、ビジョンは上記世界を実現するために、将来自社として何でもってどのようなポジションを築いているかを表現したものです。

これらミッションとビジョンを設定することで、自社としての方向性を社内に示し個々の社員のベクトルを統一しておくことが肝要です。

ミッションやビジョンとずれた施策の実施は、企業・事業のコアから離れているということでもあり、自社の強みも活かせず、ブランドも棄損し、社内の納得感も得られず、実効性・実行力の乏しいものと化す可能性が高くなります。

 

事業領域の設定

事業領域の設定は、設定したミッション・ビジョンの実現のための具体的にどのような事業を行っていくか、その基準となる事業領域を定めるということです。

大まかな事業領域を定め、そこから距離のある事業については位置づけを見直すか、売却して外すという判断が下されます。

ミッション・ビジョンと親和性のない事業を営んでいる場合、企業のブランディングという観点からも、社員個々のモチベーション維持、意識の統一等、あらゆる観点からも望ましくありません。

例えば、「豊かな移動体験を創る」というミッションを掲げていたとして、介護事業や不動産事業をやっている場合、株主や入社を検討している社員からは、この企業は一体なにがしたいんだ?ということにもなり兼ねません。

 

各事業ごとの目標・実現タイミング設定

事業部で求められれる目標値と実現タイミングを設定することが必要となります。目標値は売上や利益の形で示されることが多く、その実現タイミングも短期(1~2年)・中期 (3~5年) ・長期 (6年以降) で示されます。

目標値と実現タイミングは、事業戦略の中の戦略オプションの抽出に影響します。

短期的な目標実現が求められる場合、早期のインパクトが期待できるものを実行対象とするといった感じです。

 

事業ごとの資源配分 (ポートフォリオ管理)

最後に、上記目標値の実現にあたり、個々の事業にリソース(ヒト・モノ・カネ)をどれだけ割り当てるかを決定しましょう。

ただし、どのようにそれを決めるのでしょうか?

まず、一流企業や経営コンサルは、各事業が属する対象市場の成長性・市場ステージ(成長?成熟?など)や市場における獲得シェア、そしてシェア維持・向上のために必要なリソース量といった観点から、各事業を大まかに評価します。

代表的な考え方が、戦略コンサルティングファームであるBCGが提唱したPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)です。

縦軸に市場の成長性、横軸に対象市場におけるシェアを取り、4つの象限に分け、各事業のポジショニングを可視化し、各象限ごとで、参入・撤退や、資源配分の量を決定するというものです。

このPPMを各社アレンジしたりし、各事業の参入・撤退や資源配分を決定しているというのが実際にやっていることとなります。

例えば、「市場の成長性が高く、シェアが低い場合は、シェア獲得のために資源配分量を増やす」といった意思決定をしたり、「市場成長性は低いが、圧倒的なシェアを持つ場合は、資源配分量を減らし、得られるキャッシュ量を高め、他事業に配分する」といった意思決定がなされたりします。

また、ほしい象限に事業を有していない場合は、他企業や事業を買収することで参入するという意思決定もなされます。その際は確りとM&A戦略を策定することが必要となります。

一方で、ミッション・ビジョン実現も寄与しない、企業価値の向上にも寄与しない (他事業へのシナジーがない)、収益性が著しく低く改善の見込みがない 等 保有していたくない事業もあるかと思います。

その場合は、事業売却がポートフォリオマネジメント上望ましいということとなり、事業売却先を探すことがネクストアクションとなります。

話は資源配分に戻りますが、資源配分に使う社内リソースがなければ、外部調達を行う方法もあります。カネは資金調達すればよいし、社内で有していない機能は他社と業務提携を行うことで確保は可能です。

投下できるリソースがなければ、いくら質の良い戦略を立てたとしても効果は期待できません。

戦略に沿って、十分なリソース(ヒト・モノ・カネ等)を最適なタイミングで投入し、スピード感をもって市場シェアの確保し、参入障壁を築いていってこそ、競合との競争に勝ち抜いていけるのです。

全体として、どの事業に注力し、どの事業にどれだけのリソースを配分するかを検討し、結果的に企業価値の向上が果たされなければなりません。

企業価値向上に寄与しない事業については、キャッシュを生み出している内に早期に売却することが必要であるし、企業価値向上に最も寄与しているコア事業についてはリソースを集中投下するという判断が必要となります。

また、将来的なコア事業に対してはキャッシュを現時点では生み出せてない場合でも、投資事業と位置づけで長い目で育てていくことも必要です。

今後のステップ

今後のステップとしては、上記で定めた全社戦略を踏まえ、各事業の事業戦略を検討していくことになります。

事業戦略とは「 対象事業のビジョン・目標値実現のため、ターゲット市場で何をやっていくか (顧客に対してどのような価値を提供し、競合に対しどのような優位性を築き上げるか)」を定めたものです。

全社戦略と異なり、競合との競争の中でいかに競争優位を築いて顧客に価値を提供していくかを検討していくのが次のステップとなります。

次の記事:一流企業がやっている事業戦略の立て方とは?

 

 

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