経営企画部とは

DX時代に日本企業が飛躍するための課題とは?

記事(DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?日本企業の課題は?)でもご説明しましたが、 DX時代での勝ちパターンは、 「顧客との継続的な関係性を築き、属性・行動データを収集・分析し、顧客体験を継続的に向上させていく」 こととなります。DXの定義はいろいろとありますが、DXとは単に業務オペレーションを変えるにとどまりません。 継続的な関係性を築き(顧客接点の増加も)、データを収集し、UXを継続的に向上させていけるように、最新のデジタルテクノロジーをベースに、戦略・ビジネスモデルを見直し、それに合わせてオペレーションを最適化していくことまで含む概念がDXとなります。

  その戦略を描くこと・ビジネスモデルを刷新する役割を担っているのは誰でしょうか?

大金をはたいて外部のコンサルティング会社に委託し、デジタル時代における戦略・戦い方を都度描いてもらうことは可能です。

  しかし、基本的にコンサルティング会社は、他社が行っている先進事例を基に、クライアントに適用した場合にどのような戦略が描けるかというように発想します。

通常、戦略策定作業に3か月程度、現場への落とし込みに5か月以上かかります。日々進化する技術、変化する顧客の嗜好に即座に対応することが必要であるのにも関わらず、外部コンサルティング会社が戦略を描き・実行段階に差し掛かる頃には、もはやその戦略は時代の遅れのものとなっています。

このように変化が早い時代には、会社のかじ取りを担う経営者あるいは会社のブレーンたる経営企画部こそ、時代の変化を真っ先とらえ、ビジョンを再設定し、全社・事業戦略としてビジョン実現までの道筋を描き、現場を巻き込み実行していかなければならないのです。

しかし、私たちが数々の日本の大企業を支援してきた中で見えてきたのは「日本の経営企画部が全くと言っていい程に機能していない」ということでした。

経営者自身がデジタル変革を断行できればよいのですが、多忙を極める経営者が戦略を細部まで描き、デジタル時代に沿ったオペレーションを設計するまで現場に入り込めないのが実情です。

市場動向、顧客の嗜好の変化、競争環境の変化をいち早く読み、戦略として仕立て上げ、経営陣に意思決定を促す重要な役割を担っている部門こそ経営企画部です。しかし、経営機能を補完する重要な役割を担う経営企画部は、本来の力を発揮できていません。

 

現状、日本の経営企画部は経営層と事業部とをつなぐ単なる調整役となっているケースが多く、成長へ向けた打ち手の検討ができていないのが実情です。

日本の経営企画部には・・・

  • 世界の流れ・顧客の動向・競合の出方を読み 、
  • 自社のコアコンピタンスを踏まえた、打ち手を考察し、
  • 経営陣に対し、適切な情報をタイムリーに提供し、
  • 精度高く、スピード感のある意思決定を促す

ことが求められています。

つまりは、会社の頭脳として、会社の成長に必要な戦略を描き、デジタル時代に沿った戦略・組織のデジタルトランスフォーメーションをドライブすることが期待されているのです。

しかし、現状の日本の経営企画部は内外環境の分析も、戦略策定も、組織構造の見直しも精度高くかつ効率良く行えてると言えず、現状のままではメガテック企業及び新興のDigital Disruptorを上回ることはできませんし、いずれは資金力のある中国企業 等に買収されていくでしょう。

今後、日本の企業がGAFAやBATHのようなメガテック企業に伍するためには、日本の経営企画機能の強化が急務となっているのです。

会社の舵取りを行うのは経営陣だけとは限りません。経営企画部も会社の成長を左右する重要な意思決定に関与することが求められるため、実質、舵取り役を担っていると言っても過言ではありません。

経営企画部の役割はどのように定義できるでしょうか?

当サイトでは、下記のように経営企画部の役割を定義しました。

会社の成長を左右する重要な意思決定の精度・効率を高めるべくサポートすること

 

つまり、会社の頭脳として、会社の成長に必要な戦略を描き、デジタル時代に沿った戦略・組織のデジタルトランスフォーメーションをドライブすることが期待されているのです。

ですが、現状は事業部と経営陣に情報を連携する単なる調整役となってしまっており、本来の役割を果たせていません。経営企画部は、会社の成長を阻害する課題を発見/定義し、内外環境分析を踏まえた打ち手を経営陣に提示していく必要があります。

ただし、意思決定は経営陣が行います。そのため、その意思決定を精度高く、効率よく行えるように、情報を収集・整理・加工し、適切な判断ができるように必要な資料等を準備することが求められているのです。  

 

日本企業の経営企画部が抱える課題・役割とは?

  SPEEDAの調査によると、理想と現実で相反するセルフイメージとして以下が挙げられています。

  • 理想:企業参謀・戦略家(24%)、未来を考える部署(12%)、改革の推進者(11%)
  • 現実: 事務局(21%)、調整役(19%)、情報収集屋(5%)

 

企業がどこへ向かうべきか道筋を描き出し、必要あらば改革も行う存在としての理想はあるものの、実際は単なる調整を行う事務局としての役割ばかりとなってしまっています。

また、集めた情報は適切に加工し、戦略として仕立て上げ、経営陣が精度高く・効率よく意思決定できるようにしなければならないが、現実では単に情報の収集屋にとどまっています。  

さらに、SPEEDAの調査によると業務上の課題としては、以下が挙げられています。

  1. 短期的な業務に忙殺され、中期的な戦略を練ることが難しい
  2. メンバーのスキル・経験が足りない
  3. 調整役になってしまっている
  4. 慢性的な人で不足
  5. 形式的な資料作成に時間がかかりすぎている
  6. 社長・役員の御用聞きになってしまっている
  7. 必要十分な情報収集ができていない
  8. 他部門と十分に連携できていない
  9. 現場のことがわからない

 

以上を整理すると、経営企画部の主な負担は大きく3つと整理されています。

  1. 社内外からの情報収取に多くの時間を費やしている
  2. 経営会議などの準備に追われ、業務時間の大半が資料作りに費やされている
  3. 社内から上がってくる数字の整理・調整を中心とした管理業務が多い

私自身も色々な業種の企業の経営企画部を支援してきましたが、どこも上記課題を抱えていると感じます。  

経営企画部が果たすべき役割

本来、会社のブレーンたる経営企画部が果たすべき役割とは、大きく以下2つだと考えます。

  1. 会社の成長を左右する意思決定の精度・効率を高べくサポートすること
  2. 上記意思決定に必要な情報の収集/整理/加工/分析を行うこと

 

経営企画部の具体的なタスク

SPEEDAとの日本総研が日本企業の経営企画部に対して調査を行って結果ですが、経営企画部の具体的な業務・タスクとしては、社長の特命案件など内容が定まっていないものはあるものの大体以下となります。

  • 戦略策定
  • 戦略管理・推進 (事務局機能)
  • M&A
  • アライアンス (=業務提携)
  • 新規事業策定
  • 組織再編
  • 事業計画策定、予算の編成・統制

 

このように、会社の成長を大きく左右する戦略の策定から、その戦略が正しく実行されているかのモニタリング・評価および軌道修正の役割を果たすことが求められます。

また、策定した戦略のうち、ポートフォリオの入れ替えに関する案件に関しては、経営企画部が強く関与するのが一般的です。

例えば、M&Aによって自社に競合他社の事業や技術を取り込んだり、自社内の新規事業として成長産業に参入したりといった場合、「自社戦略と整合しているか」、「経営への財務インパクトはどの程度か」等、事業部側が見落としがちなより高次の視点からレビューすることが求められます。

策定した戦略に沿って、注力領域に対して適切にリソースをさく必要がありますが、必要あらば、組織構造を改革し、低成長な事業から高成長が期待できる領域に対する配置転換等を実行することも求められます。

策定した戦略の実行によって、どれだけの収益が生み出されるかをあらかじめ中期経営計画または事業計画に盛り込み、それを単年の予算として各事業部に割り振る。 そしてその予算を達成しているかどうか予実管理を行うことで、描いた戦略が実績値に適切に反映されるかを確認し、実績として落ちてこない場合は、原因を探り、適切に対処することが求められます。

※補足

SPEEDAの調査によると、上位に挙がる経営企画部の業務としては以下

  1. 社長・役員の調査依頼の対応
  2. 予算の策定と管理
  3. 取締役会などの会議運営
  4. M&A含む戦略投資
  5. 競合企業の状況把握
  6. 新規事業開発
  7. 組織構造の改革 等

一方、日本総研によると、 上位に挙がる経営企画部の業務としては以下

  1. 中期経営計画の策定 (全社・事業戦略の策定)
  2. ビジョン・事業領域の設定
  3. 中期経営計画の進捗管理 (実行計画の策定とモニタリング・評価)
  4. 経営トップ直轄の特命プロジェクト推進
  5. 単年度予算の編成
  6. 単年度予算の進捗管理
  7. 組織構造の見直し・拠点再編
  8. 新規事業推進
  9. M&A戦略・提携戦略推進 等

  より経営企画部を理解したい方には以下の書籍がおすすめです!  

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経営企画部を強化するために必要なこととは?

日本の経営企画部は、経営企画力向上のため、外部も最適なタイミングで活用することも考えなければなりません。

外部活用が難しい場合は、そのような経営企画人材を育成し、自社内で戦略を策定し、プロジェクトをまわしていける人材の総量を増やしていくことが必要となっています。

また、そのような人材がポテンシャルを発揮し、さらにインセンティブによってさらなる実力を出せるような評価精度等インフラも整備す必要があります。

そうでなければ、宝の持ち腐れとなり、そのような人材は容易に他社に引き抜かれてしまいます。

当サイトを活用することで、経営企画系の思考・スキル・知識を獲得することができます。

当サイトの存在目的とターゲット

令和という新時代に、日本企業が再度世界を先導する世を構築すべく、下記ミッション及びビジョンを掲げ「日本の経営企画部」は生まれました。

Mission (使命) 日本および日本企業が先導する世界の実現 Vision (長期的な経営方針) 全ての日本企業に対する武器・経営インフラの提供を通じた、国際競争力の向上

日本の経営企画部の課題は「経営企画機能の強化」です。従って、当サイトのターゲットは、会社の経営を担う人材である・・・

  • 経営陣 (CEO, COO, CFO 等)
  • 経営企画部スタッフ

を想定ターゲットとしています。また、上記に加え、これから経営企画部人材になる人材も想定ユーザーとしています。

 

今後のステップ

世界の潮流とその中での経営企画部の役割が理解できたら、早速、経営企画部の機能強化へ向けて、世の一流企業や世界の経営コンサルティング会社で行われている経営企画の実務について知見を獲得していきましょう。 次の記事:一流企業がやっている自社の現状分析のやり方

 

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