いかなるときも利益を生み出すため、無駄なコストは最小化し、製品・サービスを開発・製造・販売していくことが求められます。製品原価、販売費および一般管理費を適切に管理し、無駄なコストの可視化と削減を適宜行っていくことが健全な事業運営には必要です。
製品やサービスの新規導入時のコストであるイニシャルコストやランニングコストは、投資対効果との兼ね合い、回収見込み等に鑑み検討していくと思いますが、ここでは既存のコストをどのように削減していくかを念頭にご説明したいと思います。
コストの中でも特に、見落とされているコストが間接費です。間接費とは紙の印刷費であったり、他社への外注費等も含まれます。間接費のコスト削減によって全社としての利益率をアップさせることは可能です。
コスト削減とえは、戦略コンサルティングファームであるATカーニーのコスト削減アプローチ「最強のコスト削減―いかなる経営環境でも利益を創出する経営体質への変革」が有名です。一度読んでみる価値はあります。上記の本はコストダウンに関してはトップレベルの本ですので是非購入されてみてください。
コストダウンの全体像
コストダウンのステップとしては、大きく下記4つに分けられます。
- コストデータの収集・整理
- コストダウン余地の特定
- コストダウンの目標値及び見直し方法の決定
- コストダウンの実施・モニタリング
まずは、社内のコストデータを収集することがから始めましょう。収集したコストデータは加工がしやすいようにDB化し、データ分析をすぐさま行えるように整理することが第一ステップです。
整理したデータをあらゆる角度から分析し、コストダウン余地を特定することが次のステップです。例えば、競合比較を行ったり、過去トレンドと比率を比較したり、何らかの比較対象を用意し、自社コストの適正範囲を見極めていくこととなります。
コストダウン余地を特定したら、余地の中で目標コストダウン額を定めましょう。その上で、目標値へ向けたコストダウンのアプローチを検討し、そのアプローチ(含. 実行計画)に沿って、コストダウンを実施していくこととなります。
その後、期待する効果がでているか、推進上の課題はないかはモニタリング・評価を行い、適宜修正しつつコストダウンを実施していくというのが全体の流れです。
コストダウンの個別ステップ
コストデータの収集・整理
まずは、全社・事業戦略の中でコストダウン対象に決定した対象 (事業部/組織/サービス/コスト項目 等)を確認することから始めましょう。
そのコストダウン対象に関して、コストデータをまずは収集します。各種会計システムや会計サービスからデータを落とすことから始めることが最初のタスクです。
各コスト項目のデータを同一の形式で収集できることができれば分析まで早いですが、まずはコスト項目のデータを整える必要があります。各コストデータを落とすことに加えて、コストデータの最終執着先であるPLデータも確認することも忘れずに行いましょう。
最終的に仕上げたいのは、PLのコストデータの各コスト項目の一つ一つを分解していき、細かな費目までの大きさまで特定できる粒度まで分解できるデータベースを作りあげることです。
例えば、販売費および一般管理費という項目を分解し、各コスト項目に分解し、人件費が人員数×平均人件費単価という感じで、分かれていくイメージです。外注費であれは、例えば、外注先数×平均外注単価になります。
作成の際には、縦軸にはコスト項目が並び、横軸には年度ごとの実績値が入る仕様にできると分析が楽になります。
コストダウン余地の特定
コストデータを整備したら、コストダウン余地の特定に入りましょう。ですが、コストダウン余地を特定するのは簡単ではありません。
対象コストに関して、どれだけのコストダウン余地があるかと判断するためには、何かしらの比較対象を用意する必要があります。
例えば、以下との比較が考えらるのではないでしょうか。
- 過去トレンドとの比較 (対売上比率)
- 自社内の他コスト項目との比較 (対売上比率)
- ベンチマーク先のコスト項目との比較 (競合他社 等)
- 実原価の見積もり・推計
これらデータを可能な範囲で準備することが、コストダウン余地を特定する上で重要です。
①のステップで作成したコストデータベースにて、コストの構成比が大きな箇所から見直し余地の検討を始めましょう。構成比が小さい箇所の見直しは投資対効果が低いため、限られたリソースの有効活用の観点からは、構成比の大きな箇所を見直し検討の対象と決定しましょう。
見直し対象が例えば、外注費と決定した場合、外注費がなぜ大きくなっているかを見極めていくこととなります。外注費を外注品目に分解し、品目別で外注先ごとの外注単価のばらつきを見ましょう。
外注費の場合、同一品目の発注であっても、地域ごとで外注単価が異なることが散見される。この場合、外注先の横比較を行い、品質が高い×妥当な金額の企業に集約することで、不要なコストをダウンすることが可能となります。
このばらつきは、全体の平均外注単価の経年比較、各外注先の外注単価の横比較等いくつかの視点で、いつごろから、どこの企業で平均単価があがったのか、なぜ上がったのか、と、事実をつかみんだ後、その理由を探っていくこととなります。
外注費の外注単価のばらつきという改善箇所を見つけたら、次のステップで目標値とコストダウンアプローチ(=見直し方法)を決定しましょう。
コストダウンの目標値及び見直し方法の決定
前ステップで、改善余地を特定したら、その改善目標額を決定します。そして、その目標に向けて、どのようなアプローチ(=見直し方法)がありうるのかを検討することとなります。
例えば、前ステップでみた外注費のダウンに着手することと決定し、外注単価のばらつきを確認して、コストダウン余地を特定したとします。
そのコストダウン余地に対して、どこまでの改善が可能かを探っていくのです。その際は、なぜ外注単価が上がっているのか/他の外注先に比べ高いのか、その理由を探ったうえで、他社平均まで押し下げることが可能かどうか等探っていくこととなります。
外注先は、一定のタイミングで評価付けを行い、品質や価格の推移を見ていくことが必要ですが、それができていない企業は多少なくありません。
その際は、このようなコストダウンプロジェクトを実施し、品質や価格のばらつきを改めて確認し、データベースを作っておくことが今後のコストダウン活動にも効いてきます。
コストダウンの目標額を決定したら、どのようにそれらを見直すかを決定しましょう。
外注単価のばらつきがあった場合、例えば以下の方法が考えられるのではないでしょうか。
- 一定の評価が高い外注先への集約
- 単価が高い企業に対する、価格引き下げ要請
- 内製化 など
これらのアプローチを洗い出し、それぞれのインパクトと保有リソースにかんがみ実施難易度を確認しましょう。インパクトが高い×実施難易度が低いアプローチが最優先で取り組むべきアプローチとなります。
コストダウンの実施・モニタリング
最後は、決定したアプローチに沿って実行していくだけですが、実行計画を策定し、その計画に沿って実行していくことが重要なステップとなります。
実行計画は、実行計画の策定の記事でも紹介したが、以下のステップに分けられます。
- アプローチの確認
- アプローチのブレークダウン・タスクの抽出
- 時間軸の設定
- 担当者の設定
外注先の集約というアプローチを選択した場合、どのように集約を行っていくかを大まかなタスク領域→個別タスクというように分解していきましょう。そして、そのタスクごとで時間軸と担当者を設定し、実行計画化していきます。
その計画に沿って後は実行していくだけですが、同じくモニタリング・評価の記事で紹介したように、実行状況や効果を適宜評価・方向性修正を行っていく必要となります。
モニタリング・評価のステップとしては、大きく下記3つに分けられます。
- KPIの設定
- 会議体の設定
- モニタリング・評価の実施
まずは、どの項目で、どのタイミングで、どの程度の効果を期待するのか、KPIを設定しましょう。
そしてそのKPIや進捗状況を確認する会議体を設定するのが体制整備が必要です。そして、それの方針に沿って、実行し、実施状況をモニタリング・評価していくこととなります。
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今後のステップ
コストダウンは一回実施したら終わりではありません。継続的に無駄なコストを発生させないルールが必要であり、適宜見直しのための仕組み化を行っていくことが肝要です。組織内でも、コストダウンが恒常的に実施される体制を築くことが健全かつ盤石なオペレーションには欠かせないのです。
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