M&Aとは、つまり他の企業/事業を買収するということです。具体的には「自社機能の強化、新規市場への参入等を目的として他の企業または事業を買収する」ということです。
M&Aとは、他企業/事業を買収・合併するということです。
買収・合併先は、同業の競合であったり、川上の企業・川下の提携先であることもありますし、新規市場に参入する目的で全く別の領域の企業であるケースも少なくありません。
M&Aとは具体的に、
「自社機能の強化、新規市場への参入等を目的として他の企業または事業を買収・合併する」ということです。
自社機能の強化も新規市場への参入も自社リソースで行える場合は、買収の必要はないものの、環境変化のスピードに鑑みた場合、自社が欲しい機能を既に有してる企業を買ってしまうことで、自社単独での構築にかかる時間を節約できます。
M&Aは、大きな金額が動くことから買いたい企業みつかりました、はい買いましょうみたいな安易な判断はできません。適切な検討ステップを踏み、社内で納得感のあるM&Aの判断を行う必要があります。 特に、後段で見るバリュエーション(=企業価値評価)に関しては、いくらまでなら出す価値があるのか、出せるのかを確りと示さなければ、株主に対する説明責任を果たすことはできません。
目次
M&Aの全体像
M&Aのステップとしては、大きく下記4つに分けられます。
- M&A戦略策定
- ソーシング (=M&A候補先探し→ロング・ショートリスト作成)
- ディール実行
- PMI (M&A後の統合作業)
何よりもまず行うべきはM&A戦略策定です。
M&Aを検討している企業の中には、何のためのM&Aかを明らかにせず、いきなりソーシング(=M&A候補先探し)を行い、ああでもないこうでもないといって、いつまでもソーシングプロセスから抜け出せない企業もいます。
あらかじめM&A戦略を策定しておくことで、なぜM&Aが必要なのか、その目的達成にはどのような企業/事業を買収する必要があるのか、その基準に沿って、M&A候補先を抽出すればよく、大変効率的な検討が可能となります。
次のソーシングパートでは、20-30程度のロングリストをまず作成し、次に5社程度のショートリストを作成することとなります。
ロングリストを作成する分母をどのように取るかが非常に重要であり、その分母から最適な企業が抜けている場合、当該M&Aの質も低いものとなる可能性が高くなります。
次に、抽出した企業に対してアプローチを開始するのですが、FAに業務委託している場合、FA経由で対象企業の意向を確認することとなります。
非公開企業を想定して記載しますが、売却意向が確認できた場合、NDA-LOIを締結し、実際のDD等の買収検討に入っていきます。
DD(企業・事業の成長性・健全性等の精査)を通じ、M&Aに資する会社であることがわかり、バリュエーションによっていくらで買うのが妥当かを明らかにします。その価格でそのまま買えることはなく、対象企業の経営陣や株主と交渉し、妥結価格が決定します。
妥結価格以外にも、DA (最終契約)上の条件等を細かく取り決め、M&A検討が完了したことになります。
そしてM&A後は、対象企業をどのように自社に取り込むのか、どのようにオペレーションしていくのかをPMI計画によって定め、実際に対象会社を管理していくこととなります。
日本企業は特にPMIが不十分で、それを理由にM&Aを失敗を捉えることが多いと言われています。
M&A戦略を正しく描けていれば、その可能性も減らせますが、どのようなステップで対象企業の強みを引き出し、自社に活かせていくかを予め検討しなければ、ポテンシャルを引き出すことはできず、結局は「売却」という結果にもなりかねません。
M&Aの個別ステップ
(1) M&A戦略策定
全体像の箇所でもふれたように、M&A戦略がなければ、ほとんどのケース失敗するか、非常に非効率な検討となります。
全社・事業戦略に沿って、M&Aを検討していくと思うのですが、これまで私がサポートさせていただいた大企業で感じたことは、事業戦略上どのような企業を買収し、どのような成長ストーリーを描くかという、M&A戦略の検討が弱いということです。
M&Aが失敗するのは、M&A戦略の不在とM&A後のPMIが不十分なことが理由として多いと言われています。
なぜこの会社を買わなければならないのか、ここをあいまいにしてまま検討を進めることは、作業効率を著しく下げ、社内からの反発分子も発生する可能性も高くなります。
M&A戦略の策定とは要するに、
事業戦略で明確になったコア事業を強化するために、どのような強みを有している会社で、どのくらいの規模の会社を買収すべきか、そしてその企業とどのような成長ストーリーを描くかを決めるか、ということです。
では、M&A戦略とは何を最低限押さえておけばよいのでしょうか。
それは以下2つの観点となります。
- 全社・事業戦略との整合性
- 補完・強化・展開領域及び製品
まずは、全社・事業戦略との整合性ですが、全社戦略では各事業の目標値が示され、そこへの資源配分も明確になっているはずです。また、そのポートフォリオ方針に沿って、事業戦略が策定され、対象事業における競合との勝ち抜きシナリオが整理されているはずです。
M&Aでいくら分を埋める必要があり、そのためにいくらをM&A投資に使ってよく、M&Aによってどの領域に展開したいか/どのようなポジションを築いていきたいかが明確になっているということです。
その方針に沿って、目的を実現するためには具体的にどのような企業がいるのか、その企業とどのような成長ストーリーを描けるかを考えるのがM&A戦略となります。
また、さらに踏み込むと、補完・強化・展開したい領域や獲得したい製品が事業戦略上は抽象的にしか整理されていない場合、さらなるセグメント分けを行い、どこを押さえれば、目的実現が果たされるのかを検討することが必要となります。
M&Aによって、「何を果たしたいのか」を明確にしたら、その仮企業と共に、どのような成長ストーリーを描けるかを想定することが重要となります。
製品を獲得した上で、それをどのように自社製品と組み合わせていくのか、さらに新製品開発にどのように活かしていくのか、活かした場合にどのような領域において、どのようなポジションが築けそうかまで想定することが重要です。
(2) ソーシング (=M&A候補先探し→ロング・ショートリスト作成)
上記ストーリーを実現するうえで、どのような企業を獲得する必要があるのかを具体的に企業名を探していく作業が当ステップとなります。
まずは、「ロングリスト作成の分母となる対象をどこに定めるか」ということを考えなければなりません。
社内に知見者(各企業とリレーションを築いている営業担当者等)がいる場合、そこをあたるのが先決です。社内知見者に初期データベースを作成してもらい、洗い出された企業が出展している企業イベントをデスクトップリサーチを行っていくのがよいでしょう。
その他の方法としては、SPEEDAやCapital IQを用いて、キーワードを複数入れ込み、一気に抽出するやり方があります。但し、この場合、関係のない企業も抽出される可能性も高く、はじく作業で無駄な工数が割かれるケースも多々あります。
外注する場合ですと、経営コンサルティング会社や投資銀行など外部の企業に委託し、ロングリストを自体を作成してもらうのも一案です。
ある程度の企業が抽出できたら、一定の軸で企業を絞り込み、ロングリスト化していくこととなります。
どのような軸で初期評価を行うかというと、以下の観点となります。
- 欲しい機能をもっていそうか
- 財務面は健全か (倒産リスクはないか)
まず明らかに対象外だと考えられる企業を外していく作業が必要となります。欲しい機能もっていそうかをおおまかにデスクトップリサーチあるいはその顧客として電話で確認(いわゆるコールドコール)するなり、確認していくことをおすすめします。
デスクトップでは、企業HPを確認すれば大抵わかるはずです。さらに詳細情報が欲しければ、製品紹介のページを確認すればよいし、顧客として電話にて詳細を聞くこともできます。但し、まだロングリスト作成の段階であるため、下手に工数を割くのは得策ではありません。大体のあたりをつけるのが肝要となります。
できあがったロングリストは20-30社になっているはずです。これら企業をさらに調査・評価付けを行い、実際の意向確認を行う対象企業群となるショートリストを作成していかねばなりません。
ロングリストに挙がった企業をどのような評価軸で評価すべきかというと、以下が代表的な検討軸となります。
- 事業規模 (どの程度売上をかさましできそうか)
- 直近で売却・買収実績 (手離れし易そうな会社か)
- 株主 (ファンド保有か?Exit時期はきそうか?)
- 財務・法務リスク (倒産の可能性はないか、事業悪化の可能性はないか)
上記軸で一定の評価を行い、5~7社程度のショートリストを作成します。
当ショートリストの企業ごとの企業の会社概要、製品概要、業績、対象市場の伸び等総合的かつ簡易に調査したパッケージを作成し、どの企業に売却意向があるかを確認していくかを決定することとなります。
その意向確認のアプローチ先としては3社程度をまずは抽出します。意向確認と併せて対象会社の事業戦略や製品開発状況等確認すべきポイントは別途整理しておき、併せて情報を収集できる状態としておくことが重要です。
ではその意向確認をどのように行うかというところですが、M&Aアドバイザリーサービス会社、経営コンサルティング会社、投資銀行といったFA経由あるいは外部インタビュー会社を通じて行うか、直接聞くという方法がとられます。
売却意向がない企業は買収が難しいため、将来的な買収先候補とし、意向があった企業のうち、どの企業を実際に買収していくかを決定する必要があります。
意向があった企業からとれたヒアリング結果を基に、さらに企業パッケージを肉付けします。さらには、自社企業文化及び事業戦略との整合性も評価ポイントとなります。異なる文化を有する場合、PMIで苦労するし、シナジーを出していくのが難しくなります。
長くなりましたので、次の記事で(3)ディール実行以降をご説明したいと思います。
ちなみにM&A戦略系ででおすすめの書籍は以下です。
会社売却とバイアウト実務のすべて 実際のプロセスからスキームの特徴、企業価値評価まで
M&A戦略の策定とは要するに、
事業戦略で明確になったコア事業を強化するために、どのような強みを有している会社で、どのくらいの規模の会社を買収すべきか、そしてその企業とどのような成長ストーリーを描くかを決めるか、ということです。
では、M&A戦略とは何を最低限押さえておけばよいのでしょうか。
それは以下2つの観点となります。
- 全社・事業戦略との整合性
- 補完・強化・展開領域及び製品
まずは、全社・事業戦略との整合性ですが、全社戦略では各事業の目標値が示され、そこへの資源配分も明確になっているはずです。また、そのポートフォリオ方針に沿って、事業戦略が策定され、対象事業における競合との勝ち抜きシナリオが整理されているはずです。
M&Aでいくら分を埋める必要があり、そのためにいくらをM&A投資に使ってよく、M&Aによってどの領域に展開したいか/どのようなポジションを築いていきたいかが明確になっているということです。
その方針に沿って、目的を実現するためには具体的にどのような企業がいるのか、その企業とどのような成長ストーリーを描けるかを考えるのがM&A戦略となります。
また、さらに踏み込むと、補完・強化・展開したい領域や獲得したい製品が事業戦略上は抽象的にしか整理されていない場合、さらなるセグメント分けを行い、どこを押さえれば、目的実現が果たされるのかを検討することが必要となります。
M&Aによって、「何を果たしたいのか」を明確にしたら、その仮企業と共に、どのような成長ストーリーを描けるかを想定することが重要となります。
製品を獲得した上で、それをどのように自社製品と組み合わせていくのか、さらに新製品開発にどのように活かしていくのか、活かした場合にどのような領域において、どのようなポジションが築けそうかまで想定することが重要です。
(2) ソーシング (=M&A候補先探し→ロング・ショートリスト作成)
上記ストーリーを実現するうえで、どのような企業を獲得する必要があるのかを具体的に企業名を探していく作業が当ステップとなります。
まずは、「ロングリスト作成の分母となる対象をどこに定めるか」ということを考えなければなりません。
社内に知見者(各企業とリレーションを築いている営業担当者等)がいる場合、そこをあたるのが先決です。社内知見者に初期データベースを作成してもらい、洗い出された企業が出展している企業イベントをデスクトップリサーチを行っていくのがよいでしょう。
その他の方法としては、SPEEDAやCapital IQを用いて、キーワードを複数入れ込み、一気に抽出するやり方があります。但し、この場合、関係のない企業も抽出される可能性も高く、はじく作業で無駄な工数が割かれるケースも多々あります。
外注する場合ですと、経営コンサルティング会社や投資銀行など外部の企業に委託し、ロングリストを自体を作成してもらうのも一案です。
ある程度の企業が抽出できたら、一定の軸で企業を絞り込み、ロングリスト化していくこととなります。
どのような軸で初期評価を行うかというと、以下の観点となります。
- 欲しい機能をもっていそうか
- 財務面は健全か (倒産リスクはないか)
まず明らかに対象外だと考えられる企業を外していく作業が必要となります。欲しい機能もっていそうかをおおまかにデスクトップリサーチあるいはその顧客として電話で確認(いわゆるコールドコール)するなり、確認していくことをおすすめします。
デスクトップでは、企業HPを確認すれば大抵わかるはずです。さらに詳細情報が欲しければ、製品紹介のページを確認すればよいし、顧客として電話にて詳細を聞くこともできます。但し、まだロングリスト作成の段階であるため、下手に工数を割くのは得策ではありません。大体のあたりをつけるのが肝要となります。
できあがったロングリストは20-30社になっているはずです。これら企業をさらに調査・評価付けを行い、実際の意向確認を行う対象企業群となるショートリストを作成していかねばなりません。
ロングリストに挙がった企業をどのような評価軸で評価すべきかというと、以下が代表的な検討軸となります。
- 事業規模 (どの程度売上をかさましできそうか)
- 直近で売却・買収実績 (手離れし易そうな会社か)
- 株主 (ファンド保有か?Exit時期はきそうか?)
- 財務・法務リスク (倒産の可能性はないか、事業悪化の可能性はないか)
上記軸で一定の評価を行い、5~7社程度のショートリストを作成します。
当ショートリストの企業ごとの企業の会社概要、製品概要、業績、対象市場の伸び等総合的かつ簡易に調査したパッケージを作成し、どの企業に売却意向があるかを確認していくかを決定することとなります。
その意向確認のアプローチ先としては3社程度をまずは抽出します。意向確認と併せて対象会社の事業戦略や製品開発状況等確認すべきポイントは別途整理しておき、併せて情報を収集できる状態としておくことが重要です。
ではその意向確認をどのように行うかというところですが、M&Aアドバイザリーサービス会社、経営コンサルティング会社、投資銀行といったFA経由あるいは外部インタビュー会社を通じて行うか、直接聞くという方法がとられます。
売却意向がない企業は買収が難しいため、将来的な買収先候補とし、意向があった企業のうち、どの企業を実際に買収していくかを決定する必要があります。
意向があった企業からとれたヒアリング結果を基に、さらに企業パッケージを肉付けします。さらには、自社企業文化及び事業戦略との整合性も評価ポイントとなります。異なる文化を有する場合、PMIで苦労するし、シナジーを出していくのが難しくなります。
長くなりましたので、次の記事で(3)ディール実行以降をご説明したいと思います。
ちなみにM&A戦略系ででおすすめの書籍は以下です。
会社売却とバイアウト実務のすべて 実際のプロセスからスキームの特徴、企業価値評価まで
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