基本的に、いかなる会議でも、何かしらの資料を基に会議で討議行い、必要な意思決定を行っていくと思います。
AmazonのようにPPT資料を使用せず、Wordを使用し、説明・意思決定を行う企業も増えているものの、未だにPPTは有用なツールとして残っています。但し、PPTを単なる情報を詰め込んだものとして提示し、全体として何を伝えたいのか全く不明な資料となっているケースが散見されます。
ここで一番伝えたいのは、「いくらコンテンツをリッチにしたところで、相手に伝わらなければ何もないのと同じ」ということです。相手が理解し、何らかの判断・意思決定を行うまで促せなければ、集めた情報も、作った資料も、プレゼンの時間も全てが無駄ということです。
そこで、ここでは意思決定を促す資料が満たすべき要件について解説し、そのスキルを用いて、自社内の意思決定に活用してほしいと思います。
プレゼン資料が満たすべき要件:プレゼン資料をデザインする
プレゼン資料が満たすべき要件は以下2つとなります。
- コンテンツ:個別スライドおよび全体を通して伝えたいメッセージ
- ストーリー:聞き手の理解度を踏まえ、納得感を生み出すための各スライドの構成
1.コンテンツと2.ストーリーを考える前にやるべきことがあります。それは論点と仮説の構築です。
まずは、ツリー構造で、全体として何を伝えたいか、何を意思決定してほしいかを設定します。 (=論点設定)
例えば、「A会社を買収すべきか?」という論点に対して、仮設としてまずは、Yes or No どちらか一方の答えを記載する「Yes:A会社を買収すべきである。理由は、XXX」
その全体で通して伝えるべきメッセージが決まったら、それをサポートするサブメッセージを設定していきます。
例えば、A会社を買収すべきか?という論点に対しては、
- A会社を買収することは自社にプラスか?
- A会社の買収に伴うリスクはないか?
といったようにサブ論点を設定し、そのサブ論点に対する答えをそれぞれ準備します。そのサブ論点はまだまだ粒度が大きいため、さらに砕いて論点を設定し、それぞれの答えをまずは仮説の形でよいので設定していくのです。
その個別の答えが、各スライドのメッセージになるイメージです。このメッセージのツリー(全体で伝えたいメッセージと、個別で伝えたいメッセージ群)を、聞き手の特性を考え、流れを構成するのが 2.ストーリーです。
特性と言ったのは、聞き手それぞれで頭の中の理解の流れが異なり、理解しやすいストーリーが変わってくるため、それを踏まえてストーリーを構成しなければなりません。
ストーリーは大きく2つあります。
- 結論ファースト
- 結論ラスト
1.の結論ファースト型は、結論をはじめに提示し、そのあとで結論をサポートするデータを個別で説明する流れです。
2. の結論ラスト型は、一つずつ個別スライドを説明し、提案に対する納得感を徐々に醸成し、結論をその後提示する流れです。
1.結論ファースト型のほうが、時間的制約のある経営陣にとっては望ましですが、いきなり結論にいってしまうことで、そこで拒否反応を示し、その後のサポート資料が耳に入らない経営陣もいます。
そのため、どちらが正しいというわけではないですが、自分の会社の経営陣の理解の流れを把握したうえで、ストーリーを構築することが必要となります。
大まかなストーリーが決まったら、個別スライドを作りこんでいきましょう。
個別スライドの大まかなメッセージは、「論点・仮説ツリー」で定まっているかと思います。そのメッセージを言うために、どのような情報を、どのような形で表現したらよいかを考えるのが「個別スライド」の作成のポイントです。
例えば、市場の伸びの話で「全体として市場の伸びは顕著で、特にアジア地域の伸びが、米国・EU地域の伸びに比べ激しく、有望なマーケットである」というメッセージを出したいとき、どのよなデータを収集し、どのようなグラフで表現すればよいでしょうか?
準備すべきデータは、各国の市場規模予測のデータです。そして表現すべきは、経年の地域別積み上げ棒グラフであり、実績と今後の予測があればよいでしょう。
そこまでは誰でもわかるという話かもしれないが、そこからもう一工夫ほしいところです。
ただ、色分けを行って終わりというスライドが多いが、各セグメントの規模数値と構成比まで表現してほしいところ。さらに言えば、各セグメントのCAGR(年平均成長率)まで表現できるとスライドとしては合格です。
ここまで表現ができると、各地域がいつから、どのくらいのスピードで成長し、最終的には全市場の中でどのくらいのポーションを占めるに至るのかを瞬時に伝えることができるようになる
このようにメッセージを正しく伝えるために必要な加工を行っていき、全体としてのパッケージを完成させていきましょう。
コンテンツ作成の注意点
大企業をコンサルしてきた経験から、よく目にしたのが「ありったけの情報を詰め込んだスライド」です。
こういったスライドでは何をこのスライドを使って伝えたいのか、そしてなぜこの結論に至ったのかを読み取ることが難しい。というより不可能になります。(結果、意思決定に時間がかかり、納得感も得られない)
官公庁の資料ではそのような形式はよくありますが、意思決定を促すための資料がこのようなつくりになっている場合、正常な判断を鈍らせるリスクがあります。
これだけは守って欲しいポイントがある。それは「ワンチャート、ワンメッセージ」です。伝えたいことをシンプルに表現することこそ、スライド作成の原則です。
そして、情報収集をしていると余計な情報まで取得することがあります。調べたことは念のため盛り込んでおこうという考えであろうが、それはすぐに捨てさりましょう。
目指すべきは「精度の高い意思決定を効率よく行うべく促す」ことです。そのため、余計な情報はできる限り省き、無駄に長文で説明している文章は、シンプルな日本語で表現することが必要です。
また、読み手が読み取る情報を極力少なくすることを心掛けると良いでしょう。読み取る情報が多すぎると、情報を読み取ることに集中してしまい、伝えたいメッセージが正しく伝わらない懸念があります。
情報量を制限すると共に、情報の読み取りを容易にすることも心掛けてください。シャープなメッセージが伝わり、意思決定できさえすればよいのです。情報の読み取りが難しいスライドの例としては、例えば3次元で表現されているスライドです。
このようなスライドはどこをどのように理解すればよいか理解自体が難しく、読み手が労力を割かなければならないため、納得感以前の問題として資料の作り自体に無駄な指摘が入ることも少なくありません。
シンプルに表現することが大事であり、色使いに関しても気を付けなければなりません。。原則、スライドに使用する色は2色、多くて3色。また、濃い色は使用せず、薄い色で十分です、究極は1色のみの黒と白のみで表現する方法です。
色々な色を使用することで、この色にはどのような意味があるのか、など余計なことに神経を使わせることになる。また、いろいろな箇所に色をつけすぎることで、どこを最も強調したいのかあいまいになるケースが多くなります。
本当に強調したい箇所にのみ着色を行うなどシンプルに、メッセージとリンクさせることがスライド作りの鉄則です。
>次の記事:Amazonもやってるプレゼンデザインとは? (Word編)
以下は参考スライドです。
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これまでプレゼンデザインについて説明してきましたが、学ぶには以下の書籍がおすすめです。
外資系コンサルのスライド作成術 作例集: 実例から学ぶリアルテクニック
プロフェッショナル・プレゼンテーション (アクション・ラーニング・シリーズ)
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