現在、世の中を見渡しても自明な通り、GAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)やBAT (Baidu, Allibaba, Tencent)を代表とするメガテック企業が提供するサービスは、もはや社会のインフラの一部となっています。
また、徹底的な顧客視点に立ち、既存の産業構造を刷新していくDigital Disruptor /Digital Transformer (Netflix, Spotify, Uber 等)が台頭し、顧客からの圧倒的な支持を得て、既存の古臭く、非効率で、退屈な製品やサービスを市場から葬り去りつつあります。
そんな中、一体、日本企業は何をしているのでしょうか ?
かつては、「モノづくり大国」と呼ばれ、製品の質や洗練されたオペレーションを売りにし、世界における存在感は高かったように思います。
いまやその影は全くと言っていい程にありません。
時間の経過と共に、製品・サービスの質は新興国に追い付かれ、差別化要素となりうるレベルにありません。特に、日本企業が提供する製品・サービスは、顧客にとっては「単なる機能追加・改善レベル」に留まっており、熱狂的に欲しがる/求めているものとはなっていないのが実情ではないでしょうか。
ここで生まれてくる疑問は以下2つだと思います。
- どうしてこうなってしまったのか
- この先、日本企業は何をしないといけないのか
以降では、日本企業衰退の実情を共有した上で、その原因の深掘り、再浮上へ向けた課題とそれに対する経営企画部が果たすべき役割を説明したいと思います。
日本企業はどれ程までに衰退したのか?
下記にある時価総額ランキングをご存知でしょうか。1989年の平成が始まる頃は世界の時価総額ランキングの上位大半を日本企業が占めていました。
しかし、平成が終わる頃には世界の時価総額ランキングの中から、日本企業の名前は姿を消し、時価総額ランキング上位を、Apple、Google、Amazon等米国企業や、アリババ、テンセント等中国企業が大半を占めるようになってしまっています。
このランキングを見てもなお、まだ日本企業はイケている・存在感があり、顧客から熱狂的に受け入れられている等 言えるでしょうか。いい加減、目を覚ましましょう。
数年前から中国の脅威やデジタル技術の価値が語られていながら、市場環境・顧客の嗜好・競争環境・先端技術の変化/進化に合わせ、自社の変革を行ってこなかったツケがこういった形で顕在化してきたのです。
いわば、これは「現代版の黒船」です。もはや日本は「安くて真面目な労働力」と「品質レベルの高い下請け工場」を提供する市場に成り下がっている事実から目を背けてはいけません。
なぜ、この30年の間で、世界における日本企業のプレゼンスはこれほどまでに低下してしまったのでしょうか?時価総額ランキングの上位に名を連ねることになった企業とどのような違いがあるのでしょうか?
日本企業が衰退した原因は何か?
令和の時代に、時価総額の上位に名を連ねる企業の戦い方は、従来の製品売り切り型の戦い方とは全く異なります。
顧客とあらゆるシーンでの顧客接点を持ち、実際の顧客の行動データを継続的に収集・蓄積・分析し、UX (顧客体験)の向上とサービスの顧客個別化を実現することで、継続的に課金させる戦い方を取っています。
これは「製品売り切りモデル」ではなく、「サービス提供モデル」をとっているということであり、サブスクリプションモデルと一般的には呼ばれています。
このような戦い方をとっている企業が台頭している競争環境の中、デジタル時代におけるKey Success Factor (主要成功要因)は下記のように定義できます。
あらゆるシーンの顧客接点から収集した属性×行動データを、UX (顧客体験)向上および顧客個別化に活かす仕組みを構築できていること
今後、このようなGAFAやBAT等のメガテック企業やDigital Disruptorに伍するためには、上記KSFをおさえて戦っていく必要があります。これは、戦いの土俵に立つための前提であり、そもそもこのKSFをおさえられない企業は、顧客に受け入れられず、駆逐されていくのです。
もう少しかみ砕くと、「AI・ブロックチェーン・ロボティクス等の最先端技術」と「顧客(=デジタルネイティブ)に対する深い理解」を基に、以下の2つの論点を突き詰める必要があります。
- どのようなUX (顧客体験)を提供していくか
- UX (顧客体験)を継続的に向上させていくために、どのような行動データを収集し、どのように活用していくか
このような市場環境と競争環境の中、日本企業はどのような戦い方を繰り広げてきたのでしょうか。
現状の日本企業の戦い方を見ていると、今もなお「製品売り切り型」の戦い方であり、デジタル技術の活用も全くと言っていい程進んでいません。数年ごとに自社製品の機能を追加/改善→市場投入→ 既存顧客/別地域の新規顧客に売り込む、という従来から変わらない戦い方を未だにとっています。
GAFAやBAT等のメガテック企業やDigital Disruptor は、リアルタイムで顧客の行動を把握し、それを基にUXを日々向上させるだけでなく、よりパーソナライズドサービスに近づけようとしています。対する日本企業は、製品開発の段階のみ顧客の調査を実施し、長い月日をかけ製品を開発・製造し、市場に投入して、顧客から受け入れられるか祈るというプロセスままです。
どちらが現代の顧客から受け入れられ、継続顧客となってもらえるかは一目瞭然ではないでしょうか。
デジタル時代では、もはや求めているものがちがうのです。顧客が求めているものが同じであったら、機能追加や改善レベルの製品で良かったかもしませんが、「所有」から「利用」というメガトレンドがある中で、顧客は自分に合ったサービスを使いたいときに使いたいだけ利用したいというニーズがあるのです。
日本企業の問題点は、デジタル世界が進展し、メガテック企業が世界を掌握し、新興のDigital Disruptorに自社の主戦場が脅かされているいまもなお、戦略・ビジネスモデル・組織形態が未だに昭和の延長線上だということです。
AI等の最先端のデジタル技術の活用に関しても、どのような戦略の下、どのようにその技術を活かしていくか、目的な不明なまま行ってしまっており、結果的に単なる製品の改善レベル・オペレーションの効率化レベルに留まってしまっています。
次世代の技術が芽を出し始めた段階で、大規模な投資に踏み切れず、デジタル技術を駆使する中国企業や新興のスタートアップの脅威を目の当たりにし、慌てて本格投資を断行するものの、もはや手遅れといった事例が増えてきています。
日本企業は成長へ向けた取り組みでも後塵を拝し、結果的にそれが市場からの評価(≒時価総額)に現れてしまっているということです。
根本から日本企業の戦略・ビジネスモデル・組織構造を見直さなければ、ますます世界における日本企業の存在感は薄れていってしまうでしょう。
世界の潮流を理解するには、以下の書籍をおすすめします。
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
このような中でも、日本企業の中で危機感をもって”必死に”デジタル化を急速に進めている企業があります。
それは、トヨタです。トヨタは自動車の単なる製品売り切りモデルの会社から、「モビリティカンパニー」へ転換し、サービス提供会社へと生まれ変わろうとしています。
これまでは新車販売が最も重要視されるKPIでした。販売した段階で顧客との関係性は一時的に途切れ、買い替えのタイミングで再度顧客との関係性が復活し、再度新車を売り込むというそんなビジネスモデルです。
これからトヨタは、常時ネットに接続されたコネクテッドカーを提供することで、顧客と継続的な関係性を構築できるようになるということです。顧客の自動車の使用状況、顧客の行動データをリアルタイムで把握し、パーソナライズサービスを最適なタイミングで提供することで、サービス収益をあげるビジネスモデルへと転換しようとしています。
このように、日本トップの会社であるトヨタがやっとの思いでデジタル企業に転換しようとしていますが、大半の企業はその取り組みすらできていません。
新時代「令和」へと変わったいまこそ、自社の経営・戦い方を全面的に見直すタイミングがきているのではないでしょうか。
では、今後、日本企業が成長するにあたっての根本的に解決すべき課題は何なのでしょうか?
次の記事:経営企画部の果たすべき役割とは?で課題を説明したいと思います。
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