適した人材をいかに確保(採用)するかは、自社の成長を左右する大きな要素の一つです。
日本の社会は少子高齢化という大きな課題を抱えていることをご存知の方は多いと思います。
この少子高齢化により、労働可能な人口は年々減少傾向にあり国内の多くの中小企業は人手不足に悩まされています。
株式会社東京商工リサーチの「人手不足」関連倒産の調査結果によると、2020年度上半期(4-9月)の「人手不足」関連倒産は、215件でした。
要因として最も多いのは「後継者難」型で173件と全体の8割になっています。2年前のデータでは全体の6割だった為、わずか2年で後継者難が一気に進んでいる実情がみてとれます。
また、人手不足経営難に陥った「求人難」型は15件、中核社員の独立・転職の「従業員退職」型は20件と併せ、人材確保は企業の存続を揺るがしかねない深刻な経営課題といえます。
(引用:株式会社商工リサーチ「2020年度上半期(4-9月)「人手不足」関連倒産」)
このような人口減少・少子高齢化社会では現在も起こっているように全体のパイが少なくなれば、その中で優秀な人材を確保するための競争もおのずと激化してきます。
企業は、今から近い将来・遠い将来を見据え、対策を講じていかなければこの人材獲得競争から取り残されてしまいます。
目次
1. 人材不足に陥る原因
1-1 日本企業の人材不足の原因
日本の総人口は2008年の1億2,806万人をピークに減少を続け、2055年(令和37年)には1億人を割り込み、9,744万人になることが予想されています。
(出典:総務省統計局「人口の推移と将来人口」)
15~64歳の「生産年齢人口」も徐々に減少しているおり、1995年より減少がはじまり、2025年には7,085万人と予想され、すでに生産年齢人口が日本の総人口の60%を下回っています。この傾向は今後も、少子高齢化が進むことなどから、継続していくと予測されています。
また、企業の人手不足問題は特に中小企業に大きな打撃をあたえています。中小企業庁「2020年版中小企業白書」のデータでは、規模が小さいほど人材が足りていない結果が出ています。さらに規模が小さい企業ほど求人を増加させているが、就職希望者数はそれを大きく下回っています。
業界別に見ても、人材確保ができている業界と、人材確保が難しい業界があり、建設業、情報通信業、医療・福祉業で人手不足感が強い傾向になっています。
その他、日本企業特有の問題として誤解を恐れず発すると、辞めさせられない働かない高年齢層が自社の競争力を低下させ、コスト負担も大きいことから新戦力に循環できる構造に至らない企業も少ながらずでてきています。
それは改めて論じることとして、今回は人材確保に苦戦する原因について深堀していきたいと思います。
1-2 人材確保に苦戦する原因
企業が人材を確保できない理由について、複数の原因を解説していきます。
理由のひとつは、求職者にとって労働条件が魅力的でないということが考えられます。
待遇をよくしたいというのは経営者の皆さんは誰しも思うところでしょうが、なかなか皆が満足するような待遇に一日にしてできるということはないと思います。そういった場合は環境面なども過去・現在・将来をしっかりプレゼンし、参画してもらって一緒に働く環境や条件を良くしていこうと期待をかけていくということも大事です。課題等も隠さず話することで求職者からの信頼ややりがいを引き出すことも可能となります。
また、目をそむけたくなることですが、採用する側のスキルが不足している点も大きな要因になっていることが多いです。
提示した条件で、求める人材が集まらない、面接を実施するまでにも相当苦労するという状況を憂う社長や採用担当者の声をよく聞きます。
考えられる要因としては、
・自社の魅力を求職者に伝えられていない
・競合他社との差別化ができていない
・業務内容や条件などが整理されていない
などがあげられます。
良い人材を獲得するには、採用する側のスキルも重要となってきます。どのような人材がほしいか採用基準が明確になっていない、面接官が求めている人材を見極められていない、面接官によって内容のばらつきがあるといったことなどが考えられます。
それでは、どのようにしていけばよいのでしょうか?
2. 人材確保に向けた採用力強化の対策・解消
2-1 求人情報の整理
コストをかけずに実践できる取り組み例として、まずは求人情報に掲載される内容のブラッシュアップです。
どのような人物を求めているのか?
求める業界経験や所有資格の詳細
担当業務の内容を具体的に(入社後をイメージしやすいように)条件面これらを明確にします。
条件に関しては、確定的な情報は記載が難しいといったケースでも、下限金額は記載すべきでしょう。
2-2 新しい働き手へ目を向ける
2021年4月より、改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの雇用確保(義務)、70歳までの就業確保が努力義務となり、業種によっては高年齢者の経験・能力を活用し、人手不足を解決していく手段となり得ます。女性やシニア・外国人の働き手は増えていますので、正社員、フルタイム勤務にこだわらない人材を積極的に活用していく方法や、育児・介護と仕事を両立できるような分業体制をつくり、フルタイム以外の人材を確保する方法も考えられます。
またリモートワークを積極的に活用し、今までは物理的に難しかったエリアの人材を雇用することや、副業を認める企業も増えていく傾向がありますので、専門性の高い業務を切り出して委託することも考えられます。
2-3 採用アプローチ手法を変える
① SNSを活用する
「Facebook」や「Instagram」「twitter」などのSNSを利用して求職者を開拓する方法で、日本ではまだ利用企業が少ないので競合も少なく、新しいモノや流行に敏感で自ら情報収集やスキルアップを目指している人へのアプローチが格段にUPできる可能性があります。
期待点:コストがかからない
キャリアに意識の高い人へ直接アプローチできる
課題点:アプローチする為の手間がかかる
最近では、こういったSNSと採用に特化したサービスも出ていますので、活用してみてはいかがでしょうか
LINEモチカ(https://lin.ee/kzKpmMS)
② リファラル採用
リファラル採用とは、自社社員による紹介によって人材を獲得する手法です。これまで誰とも接点の無かった人を採用するのではなく、社員から性格や“人となり”を予め知れるといった点でメリットがあり、求職者からみても知っている人が会社にいるということで会社になじみやすく仕事がやりやすくなるといったメリットがあり、近年このしあ用を採り入れる企業も増えてきています。
この手法が定着するかは、インセンティブ等によるリファラル採用に対する社員のモチベーションアップが必要となってきます。
2-4 自社の採用スキルをあげる
人材確保に苦戦する原因でもふれたように採用する側のスキルが追い付いていない場合も散見されます。
それを解消するには、一朝一夕では難しいですが、だからこそすぐに取り掛からないといつまでたってもよい人材確保の為の精度が上がりません。
では、具体的にはどのようなことをすれば採用スキルがあがるでしょうか?
採用に関しては、これからずっと一緒に働くメンバーであり、会社の成長を託す重要な選考なので、社長が深く関わるのはもちろん重要なことですが、それにかかりっきりになることは多くの企業は難しいと思います。となると、分担が必要になってきますが、以前勤めていた企業で、役職者であれば一律に順番で面接担当となり、しかも求める人材像や選考基準などの共有も一切ない状態で任されるという状態でした。
これでは、何を基準に判断すればよいか現場ではわからず、それぞれの判断で合否を判断するといった状況になってしまい、有効な人材採用がまったくできていないといった事態になっていました。
この例は社長の怠慢であり、多くの企業はここまでひどい状態ではないと思いますが、やはり以下の点は最低限意思統一が必要です。
〇求める人材像
〇選考基準(スキル・人間性等)
〇求職者に伝える内容、会社のアピール面
〇具体的な業務の内容
そして、重要なのが採用活動においてもマネジメントを行なう裁量のある人選を行なうことが挙げられます。
通り一辺倒な面接を行ってもなかなかうまくいくことはなく、求職者毎にアプローチを考えて行動しなければ優秀な人材を逃してしまう可能性も高くなります。
〇面接者それぞれに求職者に会社の魅力を伝えられるよう伝える内容を共有する
→会社の魅力を伝える・会社の未来を語れる人材としては、部門長や役員がやはり望ましいです
〇求職者の状況に応じて臨機応変に担当や面接内容を変更する
→既に魅力を感じてもらっている人と、興味あるレベルの人に対して同じ内容の面接を行なっても時間の無駄になってしまう可能性があります。
事業内容を中心に会社をアピールする方がよいか?ポジションや権限・会社の方向性、期待する役割等をアピールする方が良いのか?
営業と同じように相手の状況によって対応する力が必要となります。
〇判断基準の明確化
複数の面接担当者で採用活動を行なう場合は、会社が求める人材と違う人が面接を通過し次の面接に進むことになってしまうと、そもそもが時間の浪費になってしまう為判断基準・求める人材像の共有が重要となります。
私が人材採用で行っていた複数担当者がいる場合のやり方を記載しますので参考にしていただければ幸いです。
・求める人材像の共有:日々全社員に伝えることで共有が容易になります。
・採用予定ポジションの業務的及び社内的役割の共有
・求職者が会社にメリットを出せる武器を面接で探し出す
・求職者が何をやりたいと思っているのか?会社に期待している点は何かを感じる
・面接での質問内容・返答内容を文字で残す→皆の意識共有化に役立つ・判断基準が明確になる
これを繰り返し行っていくことで担当ごとのブレがなくなり、同じ判断基準になり、且つ皆が会社のアピール点を語れるようになってきます。
まとめ
人材採用は経営・会社を理解している人が中心となって、会社の経営戦略と採用方針に沿って活動していく
一辺倒な進め方でなく、求職者によって臨機応変に対応する判断力を行なう
採用判断基準を明確にし面接内容を文章化し共有することで皆の意思を統一して誰が行っても有効な面接となるよう採用力を強化する
最後に、人材獲得する際、特に面接においてのマインドの持ち方をお伝えしておきます。
どうしても採用するということで会社側が選んでいるという感覚になりがちですが、内定を出してもなかなか入社に至らないというケースが多い企業は、こういったマインドで進めていることが多い傾向にあるようです。
求職者側も単なる欠員補充なのか?会社の足りないピースを埋めるための人財探しをしているのかは感じるものです。
求職者側も会社を選んでいるということを忘れずに、選ぶという意識よりも会社をアピールして入社したくなるような気持にさせるというマインドで接すると相手に気持ちが伝わりやすくなりますので、人材確保において重要なことの一つとして参考にしていただければと幸いです。
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